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本記事では「言いたいことが言えない」「気まずさが怖くて我慢してしまう」という方に向けて、その背景にある心理と、認知行動療法(CBT)を用いた改善のプロセスをわかりやすく解説します。夫婦関係(家事負担の偏り)と職場(上司に言えない)の両方の事例を扱います。


1.なぜ、言いたいことが言えないのか

(要約:言えないのは“気弱さ”ではなく、関係を守ろうとする誠実さ)

人と関わるうえで、意見の違いが生まれることは、避けようのない自然な出来事です。
本当は伝えたいことがあっても、いざ相手を前にすると喉の奥で言葉が止まり、
「言ってもいいのだろうか」「嫌な空気にならないだろうか」と不安が押し寄せる。

この“言えなさ”の背景には、
単なる性格的な弱さではなく、

できるだけ相手を傷つけたくない
関係を壊したくない
距離ができることを恐れている

という “関係を守ろうとする意図” があることが多くあります。

だからこそ、言えない人は、実はとても誠実で、慎重で、相手を大切にする力を持っている方なのです。

ですが、その優しさゆえに「我慢」の比重が偏ってしまうと、
だんだんと心がすり減り、
「本当の自分を出せない関係」になっていきます。


2.このしんどさの正体 ― 衝突恐怖・気まずさ恐怖

(要約:人は“伝えること”ではなく“その後の関係変化”を恐れている)

「言うのが怖い」わけではありません。
多くの方が恐れているのは、その “先” にあるものです。

この恐れは心理学的には

とも説明されます。

つまり、

“意見を伝えること”ではなく、
“関係が壊れる未来”を想像してしまう

そのため身体は防御反応として、声を止め、動きを止め、「沈黙」を選びます。


3.「避ければ守れる」は本当か?

(要約:短期的な安全は守れても、長期的には静かな関係悪化を招く)

衝突を避ければ、当面は平和です。
しかし“維持している”のではなく、
“更新が止まっている” 状態になります。

一時的長期的
気まずさ回避わだかまりの蓄積
衝突なし誤解が固定化
平穏関係の質が低下

特に夫婦・家族・職場といった“長い関係”ほど、
更新が止まる → バランスだけが崩れ続ける
という形で後から大きな歪みになります。


4.衝突は“破壊”ではなく“更新”

(要約:関係が長持ちするのは「衝突がない」ではなく「更新できる」関係)

人間関係は、完成物ではなく“変化するもの”です。
生活リズムも役割も、時間とともに変わっていきます。

ところが、衝突=悪いこと と思い込むと、
「変化をかける」ための対話まで封じてしまいます。

本来の構造はこうです。

衝突(価値観の違いが表に現れる)
→ すり合わせ(お互いの立ち位置を更新)
→ 新しい関係地図ができる

つまり衝突は “終わり” ではなく 通過点
むしろ衝突が一切起きない関係は、
「どちらか一方が我慢している関係」でもあります。


5.認知行動療法(CBT)で整理すると見えてくる

(要約:“伝えられない”は思考と身体反応の悪循環)

CBTの枠組みに当てはめると、“言えない”は次のような循環で維持されています。

(状況)家事負担や業務負担の偏り
→(認知)言うと壊れる/嫌われる
→(感情)不安・緊張
→(身体反応)固まる・声が出ない
→(行動)沈黙・回避
→(短期結果)表面上は平和
→(長期結果)孤立・疲弊

ここで必要なのは、
度胸でも性格改善でもなく、

「“言っても壊れない”経験を少しずつ積むこと」
です。


6.まず“伝え方”より前にやること

(要約:「責める言葉」を避けるコツは“整理”が先)

多くの方がつまずくのは「どう言うか」から入ることです。

その前に必要なのは、次の4つの整理です。

  1. 状況の特定(事実)
  2. 自分の限界・しんどさ
  3. 目的(改善?共有?相談?)
  4. 責任の所在を“相手個人”ではなく“仕組み”へ

ここまで整理ができると、
相手を責めているのではなく
“問題を一緒に扱う”姿勢に変わります。


7.よくあるケース:夫婦と職場

(要約:場面が違っても「仕組み更新が止まる」構造は同じ)

7-1.夫婦の場合(家事・生活リズムの偏り)

初期:「このくらいなら何とかなる」

中期:「自分だけが背負っている感覚」

後期:「もう話し合う気力もない」

関係の静かな断絶(形だけ維持)

7-2.職場の場合(上司に言えない)

初期:「少し無理すれば回る」

中期:「耐えるのが当たり前になる」

後期:「失敗や体調不良でようやくSOS化」

結果として“限界突破後”にしか声が出ない


8.安全に伝えるための実践ステップ

(要約:伝え方ではなく枠組みを変える)

まず 攻撃ではなく共有へ 枠組みを変えます。

8-1.夫婦の例

Before
「あなたがやらないから私がしんどい」

After
「今の分担では、私1人では維持できない状態です。
仕組みとして一緒に見直しませんか。」

→ “あなたの性格”ではなく“運用上の問題”に変える

8-2.職場の例(上司)

Before
「もう無理です」「減らしてください」

After
「現状のタスク量では品質確保が難しくなっています。
一度、優先順位や流れの整理をご相談させてください。」

→ “能力不足の申告”ではなく“業務運営への提案”


9.Q&A

(要約:我慢体質ではなく学習パターン)

Q1.声が出ないのは弱さ?
→ 防御反応。弱さではなく“身を守る学習”。

Q2.感情的になりそうで怖い
→ 感情処理の前に「状況」の整理を。

Q3.言っても伝わらない相手は?
→ まず“理解”ではなく“共有”を成立させる。


10.まとめ ― 「衝突を避ける」から「更新していく関係」へ

“言わないほうが平和”という考えは
短期的にはあなたを守りますが、
長期的には関係を静かに蝕みます。

必要なのは「強さ」ではなく、
“壊れない経験”を積み直すこと


11.まずは相談ではなく「整理」から(CTA)

当センターでは、いきなり対立や助言に踏み込むのではなく、
「何を、どこまで、どう扱うか」を一緒に整理するところから始めます。

“言える自分”をつくるのではなく
“言っても壊れない関係”を取り戻す支援です。


12.お申込・お問い合わせ(山口店)

山口店では、落ち着いた環境でゆっくりお話ができるプライベートスペースをご用意しています。
オンライン・対面のどちらも可能です。

所在地
〒753-0055
山口県山口市今井町4-10 山根ビル201号室
(JR湯田温泉駅 徒歩1分)

営業時間
10:00〜20:00(完全予約制)

WEB
https://yamaguchi.cbt-mental.co.jp/

LINE
https://lin.ee/26sKHRK8

申込フォーム
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSelm3nMBwOyvwnkhrkihe-APBzNTll2NL4fsPB6b6hHMzC8GA/viewform

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