2025年10月25日
- 認知行動療法
「言いたいことが言えない」「気まずさが怖い」人のためのカウンセリング/認知行動療法カウンセリングセンター山口店
本記事では「言いたいことが言えない」「気まずさが怖くて我慢してしまう」という方に向けて、その背景にある心理と、認知行動療法(CBT)を用いた改善のプロセスをわかりやすく解説します。夫婦関係(家事負担の偏り)と職場(上司に言えない)の両方の事例を扱います。
1.なぜ、言いたいことが言えないのか
(要約:言えないのは“気弱さ”ではなく、関係を守ろうとする誠実さ)
人と関わるうえで、意見の違いが生まれることは、避けようのない自然な出来事です。
本当は伝えたいことがあっても、いざ相手を前にすると喉の奥で言葉が止まり、
「言ってもいいのだろうか」「嫌な空気にならないだろうか」と不安が押し寄せる。
この“言えなさ”の背景には、
単なる性格的な弱さではなく、
できるだけ相手を傷つけたくない
関係を壊したくない
距離ができることを恐れている
という “関係を守ろうとする意図” があることが多くあります。
だからこそ、言えない人は、実はとても誠実で、慎重で、相手を大切にする力を持っている方なのです。
ですが、その優しさゆえに「我慢」の比重が偏ってしまうと、
だんだんと心がすり減り、
「本当の自分を出せない関係」になっていきます。
2.このしんどさの正体 ― 衝突恐怖・気まずさ恐怖
(要約:人は“伝えること”ではなく“その後の関係変化”を恐れている)
「言うのが怖い」わけではありません。
多くの方が恐れているのは、その “先” にあるものです。
- 言ったことで気まずくなる
- 相手が不機嫌になる
- 修復不能な距離ができてしまう
- 「面倒な人」だと思われるのではないか
この恐れは心理学的には
- 衝突恐怖
- 気まずさ恐怖
- 関係破綻への予期不安
とも説明されます。
つまり、
“意見を伝えること”ではなく、
“関係が壊れる未来”を想像してしまう
そのため身体は防御反応として、声を止め、動きを止め、「沈黙」を選びます。
3.「避ければ守れる」は本当か?
(要約:短期的な安全は守れても、長期的には静かな関係悪化を招く)
衝突を避ければ、当面は平和です。
しかし“維持している”のではなく、
“更新が止まっている” 状態になります。
| 一時的 | 長期的 |
| 気まずさ回避 | わだかまりの蓄積 |
| 衝突なし | 誤解が固定化 |
| 平穏 | 関係の質が低下 |
特に夫婦・家族・職場といった“長い関係”ほど、
更新が止まる → バランスだけが崩れ続ける
という形で後から大きな歪みになります。
4.衝突は“破壊”ではなく“更新”
(要約:関係が長持ちするのは「衝突がない」ではなく「更新できる」関係)
人間関係は、完成物ではなく“変化するもの”です。
生活リズムも役割も、時間とともに変わっていきます。
ところが、衝突=悪いこと と思い込むと、
「変化をかける」ための対話まで封じてしまいます。
本来の構造はこうです。
衝突(価値観の違いが表に現れる)
→ すり合わせ(お互いの立ち位置を更新)
→ 新しい関係地図ができる
つまり衝突は “終わり” ではなく 通過点。
むしろ衝突が一切起きない関係は、
「どちらか一方が我慢している関係」でもあります。
5.認知行動療法(CBT)で整理すると見えてくる
(要約:“伝えられない”は思考と身体反応の悪循環)
CBTの枠組みに当てはめると、“言えない”は次のような循環で維持されています。
(状況)家事負担や業務負担の偏り
→(認知)言うと壊れる/嫌われる
→(感情)不安・緊張
→(身体反応)固まる・声が出ない
→(行動)沈黙・回避
→(短期結果)表面上は平和
→(長期結果)孤立・疲弊
ここで必要なのは、
度胸でも性格改善でもなく、
「“言っても壊れない”経験を少しずつ積むこと」
です。
6.まず“伝え方”より前にやること
(要約:「責める言葉」を避けるコツは“整理”が先)
多くの方がつまずくのは「どう言うか」から入ることです。
その前に必要なのは、次の4つの整理です。
- 状況の特定(事実)
- 自分の限界・しんどさ
- 目的(改善?共有?相談?)
- 責任の所在を“相手個人”ではなく“仕組み”へ
ここまで整理ができると、
相手を責めているのではなく
“問題を一緒に扱う”姿勢に変わります。
7.よくあるケース:夫婦と職場
(要約:場面が違っても「仕組み更新が止まる」構造は同じ)
7-1.夫婦の場合(家事・生活リズムの偏り)
初期:「このくらいなら何とかなる」
↓
中期:「自分だけが背負っている感覚」
↓
後期:「もう話し合う気力もない」
↓
関係の静かな断絶(形だけ維持)
7-2.職場の場合(上司に言えない)
初期:「少し無理すれば回る」
↓
中期:「耐えるのが当たり前になる」
↓
後期:「失敗や体調不良でようやくSOS化」
↓
結果として“限界突破後”にしか声が出ない
8.安全に伝えるための実践ステップ
(要約:伝え方ではなく枠組みを変える)
まず 攻撃ではなく共有へ 枠組みを変えます。
8-1.夫婦の例
Before
「あなたがやらないから私がしんどい」
After
「今の分担では、私1人では維持できない状態です。
仕組みとして一緒に見直しませんか。」
→ “あなたの性格”ではなく“運用上の問題”に変える
8-2.職場の例(上司)
Before
「もう無理です」「減らしてください」
After
「現状のタスク量では品質確保が難しくなっています。
一度、優先順位や流れの整理をご相談させてください。」
→ “能力不足の申告”ではなく“業務運営への提案”
9.Q&A
(要約:我慢体質ではなく学習パターン)
Q1.声が出ないのは弱さ?
→ 防御反応。弱さではなく“身を守る学習”。
Q2.感情的になりそうで怖い
→ 感情処理の前に「状況」の整理を。
Q3.言っても伝わらない相手は?
→ まず“理解”ではなく“共有”を成立させる。
10.まとめ ― 「衝突を避ける」から「更新していく関係」へ
“言わないほうが平和”という考えは
短期的にはあなたを守りますが、
長期的には関係を静かに蝕みます。
必要なのは「強さ」ではなく、
“壊れない経験”を積み直すこと。
11.まずは相談ではなく「整理」から(CTA)
当センターでは、いきなり対立や助言に踏み込むのではなく、
「何を、どこまで、どう扱うか」を一緒に整理するところから始めます。
“言える自分”をつくるのではなく
“言っても壊れない関係”を取り戻す支援です。
12.お申込・お問い合わせ(山口店)
山口店では、落ち着いた環境でゆっくりお話ができるプライベートスペースをご用意しています。
オンライン・対面のどちらも可能です。
所在地
〒753-0055
山口県山口市今井町4-10 山根ビル201号室
(JR湯田温泉駅 徒歩1分)
営業時間
10:00〜20:00(完全予約制)
WEB
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申込フォーム
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