こんにちは。認知行動療法カウンセリングセンター山口店のスタッフです。
今回は、資産運用をされている方を対象に、特に「デイトレード」に焦点を当てながら、投資におけるメンタルケアの重要性とその調整方法についてお話しします。

近年、NISA（少額投資非課税制度）を活用した長期分散投資が多くの人々に注目されています。安定的な資産形成の方法として、長期的視点でリスクを抑える運用スタイルは、多くの投資家にとって安心感のある選択肢です。私自身も積み立てNISAや小規模企業共済を利用しており、老後資金の形成を少しずつ進めています。一方で、「短期間で利益を上げたい」「日々の生活をより豊かにしたい」という理由から、短期的な投資スタイルであるデイトレードを選ばれる方も多いのではないでしょうか。

デイトレードとは？

デイトレードとは、株式市場の動きに合わせて1日の中で頻繁に売買を繰り返し、その差額を利益として得る投資スタイルです。例えば、株価が100円の銘柄を100枚購入し、その株価が105円に上昇した際に売却すれば、500円の利益を得られる計算になります。このように理論上は「安く買い、高く売る」というシンプルな仕組みです。

しかし、実際にはこのスタイルを成功させるのは簡単ではありません。株価の動きを読む知識やスキルだけでなく、メンタルの管理が大きく影響を与えるからです。デイトレードにおいては、感情に流されることで冷静さを失い、思わぬ損失を招くことが少なくありません。そのため、「メンタル面の調整」は成功を左右する重要な要素となります。

デイトレードにおける主なメンタル課題

デイトレードは短期間で結果が出るため、投資判断を行う際の心理的なプレッシャーが直接、利益や損失に影響します。ここでは、特に多いメンタル面での課題を挙げてみます。

1. 焦りや不安

株価は常に変動しており、自分の予測に反する動きをすることも多々あります。そのため、「早く売らなければ損するかもしれない」「買った直後に値下がりしたらどうしよう」といった焦りや不安を抱えやすい状況に置かれます。

2. 損失を取り戻そうとする衝動

損失が出た場合、その損失を埋めようとして無理な取引を行うことがあります。この「損失回復のための取引」は、冷静な判断を妨げ、結果としてさらに大きな損失を生むリスクがあります。

3. 利益確定のタイミング

利益が出ている場合でも、「もっと利益を伸ばせるかもしれない」と欲を出しすぎて売却のタイミングを逃してしまうことがあります。一方で、逆に早く利益を確定させようとしてしまい、本来得られるはずだった利益を減らしてしまうこともあります。

デイトレードに活かすメンタル調整法（認知行動療法の視点から）

当カウンセリングセンターでは、認知行動療法（CBT）の考え方を取り入れたメンタル調整法を活用しています。ここでは、デイトレードに応用できる具体的な方法をご紹介します。

1. 敗北リサーチ

取引後、その日のトレードを振り返る習慣を持ちましょう。特に損失が出た取引については、その原因を分析し、再発防止のための対策を考えることが重要です。

• エントリーポイントや損切りのタイミングが適切だったか？
• 感情に左右されて判断が変わった場面はなかったか？

こうした振り返りを日々積み重ねることで、次回以降のトレード精度が向上します。

2. 感情に気づく

デイトレード中は、感情の変化を観察することも重要です。株価の上下に一喜一憂していると冷静さを失いやすくなります。自分の感情を客観的に観察し、「焦っている」「欲が出ている」など感情に名前をつけて認識することで、冷静な状態を取り戻しやすくなります。

3. 気持ちを切り替える

損失や予想外の結果に直面した際は、一度気持ちをリセットする行動を取り入れましょう。例えば：

• 席を離れてトイレに行く
• 冷たい水で顔を洗う
• 深呼吸をする

これらの行動は、感情が高ぶりやすい状況を中断し、冷静さを取り戻す効果があります。

4. 損切りの練習

デイトレードでは、損失を最小限に抑える「損切り」が欠かせません。ただし、損切りを行うことに心理的抵抗を感じる人も多いです。そのため、少額の取引で損切りを練習するのが効果的です。また、自分を励ます「切り替えフレーズ」を用意しておくのも良いでしょう。

• 「損切りしても次のチャンスがある」
• 「今抜ける方が賢明だ」

5. 緊急時の対応マニュアルの作成

大きな損失を出した際のパニックを防ぐため、事前に対応マニュアルを作成しましょう。

• 大きく負けたときに取るべき行動を具体的に書き出す
• 一定額以上の損失が出たら取引を中断するルールを決める

おわりに

認知行動療法カウンセリングセンター山口店では、資産運用中に感じるストレスや不安に対するメンタルケアをサポートしています。当センターのメンタルケアは、投資の成功を保証するものではありませんが、メンタル面での受け身の取り方を習得していくイメージのものとなります。。

資産運用に関わるメンタルヘルスについてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

認知行動療法カウンセリングセンター山口店

https://yamaguchi.cbt-mental.co.jp/

——代表者情報——

岡村優希

株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役

認知行動療法カウンセリングセンター代表

公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士

個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。

さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。

◆執筆書籍

「臨床心理学 〈１２３（第２１巻第３号）〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版

「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房

◆テレビ出演

読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日

「あなたの味方！お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演

◆雑誌掲載

「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号

◆近年の講演実績

2024年2月21日

広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師

2023年2月9日

NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師

2022年7月6日

筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師

その他、学会発表多数