2025年03月05日
- 認知行動療法
強迫症と依存症のカウンセリングについての考察

山口市にある認知行動療法カウンセリングセンター山口店のスタッフです。日々の生活の中で、「これをやらないと気が済まない」「やめようとしてもやめられない」と感じることはありませんか?それが強迫症(OCD)の衝動なのか、依存症の衝動なのかを見極めることは、適切な対処法を見つける上で非常に重要です。本記事では、強迫症の衝動と依存の衝動の違いを整理し、それぞれに適した対処法について解説します。
強迫症の衝動とは?
強迫症(OCD)の衝動は、「やらないと耐えられない」という強い不快な感情や身体反応に駆られるものです。例えば、手洗いをやめられない人は「手を洗わなかったら恐ろしいことが起こる」といった強烈な不快感を感じ、それが軽減するまでやめたくてもやめられません。この例では、強迫観念(考え)が行動を引き起こしており、手を洗うことで強烈な不快感が一時的に軽減されるため、極めて強固なものになります。
依存の衝動とは?
依存(アルコール、ギャンブル、スマートフォンなど)の衝動は、「やりたい・やったら気持ちいい」という快楽系の欲求が主な動機となります。依存が進むと、渇望(クレイビング)が強くなり、コントロールが難しくなることもありますが、強迫症の衝動とは異なり、「やらないと耐えられないほどの不快感」というレベルには達しません。
依存症の本質は、「快楽の追求」ではなく「心理的な不快感の緩和」とする考え方もあります。これを自己治療仮説(Self-Medication Hypothesis, SMH)と呼びます。この仮説では、アルコール・薬物・ギャンブル・スマホなどの依存行動は、「楽しむため」ではなく、「ストレス等の不快感を和らげるため」に行われるとされます。これは強迫症の強迫行動と類似した側面があり、依存症もまた「不快感への対処行動」の一種である可能性を示唆しています。
しかし、依存症の維持要因には個人差があり、「快楽(正の強化)」が関係することもあれば、「不快感の回避(負の強化)」が主な要因になることもあります。そのため、すべての依存症が自己治療仮説だけで説明できるわけではない点にも注意が必要です。
強迫症の衝動と依存の衝動の決定的な違い
項目 | 強迫症の衝動 | 依存の衝動 |
衝動の目的 | 不快感を軽減するため | 快楽や報酬を得るため |
典型的な行動 | 手洗い、確認行動、整理整頓など | 飲酒、ギャンブル、スマホ使用など |
衝動の継続性 | 何度繰り返しても安心できず、悪化しやすい | 一時的に満たされることがある |
強迫症の衝動は、行動すれば行動するほど悪化することが多いのが特徴です。一方、依存の衝動は欲求が満たされると一時的に落ち着くことがありますが、繰り返すうちに依存が深まり、コントロールが難しくなります。
それぞれの対処法
依存症の対処法:「距離をとる」
依存症の衝動は、刺激(アルコール、ギャンブル、スマホなど)に触れるとさらに強まるため、基本的な対処法は**「引き離す」**ことになります。
- アルコール依存 → 断酒(少しでも飲むと止まらなくなるため)
- ギャンブル依存 → パチンコ店に行かない、アプリを削除する
- ゲーム・スマホ依存 → ルールを決めて使用時間を制限する
依存対象との距離を物理的・心理的に置くことで、衝動を抑える力を取り戻すことが狙いとなります。
強迫症の対処法:「不快感と向き合う」
強迫症の衝動は「やらないと不快感で耐えられない」というものです。不快感を避け続けると、かえって不快感が増してしまいます。そのため、「不快感と向き合う」ことが必要になります。
これがエクスポージャー(曝露反応妨害, ERP)と呼ばれる方法です。
- 手洗い強迫 → 手を洗わずに一定時間過ごしてみる
- 確認強迫 → ドアの鍵を確認せずに出かける
- 不潔恐怖 → わざと汚れたものに触る
最初は強い不快感が出ますが、「あれ、意外と大丈夫かも?」と気づくことで、衝動が弱まっていきます。
なぜ対処法が違うのか?
項目 | 依存の対処法 | 強迫症の対処法 |
基本的な戦略 | 刺激を減らす(距離をとる) | 不快感に向き合う(エクスポージャー) |
目標 | 衝動が生じる状況を避ける | 衝動に対する耐性をつける |
依存の衝動は「やればやるほどクセになる」ため、刺激を減らすことが効果的ですが、強迫症の衝動は「避けるほど不快感が増す」ため、エクスポージャーが適しています。
依存にもエクスポージャーが使われる?
依存症では基本的に距離をとるのが有効ですが、現実には完全に避けることが難しい場面があります。そこで、「キューエクスポージャー(Cue Exposure Therapy, CET)」という方法が使われることがあります。
キューエクスポージャーとは?
依存症では、「酒を見る」「パチンコ店の前を通る」などの特定のきっかけ(キュー, Cue)が衝動を引き起こします。キューエクスポージャーは、そうしたトリガーにさらされても、実際に依存行動をしない練習をする方法です。
例えば:
- アルコール依存 → 目の前に酒を置くが飲まない
- 喫煙依存 → タバコの煙の匂いを嗅ぐが吸わない
- ギャンブル依存 → パチンコ台の映像を見るが打たない
強迫症のエクスポージャーとの違い
項目 | 強迫症のエクスポージャー | 依存のキューエクスポージャー |
目的 | 不快感に向かって行動を減らす | 衝動を抑える練習をする |
衝動の種類 | 「やらないと不快感がある」 | 「やりたくてたまらない」 |
やらないと… | 最初は不快感が増すが、そのうち落ち着く | 最初は欲求が強まるが、我慢すると落ち着く |
最終的に | そもそも強迫衝動が減る | 衝動がきてもコントロールできるようになる |
つまり、強迫症では「やらなくても大丈夫」と気づくのが目的なのに対し、依存では「衝動がきても耐えられる」ことを学ぶのが目的になります。
まとめ
強迫症と依存症の衝動は、性質が大きく異なるため、対処法も異なります。強迫症には「不快感に向き合う」エクスポージャーが、依存症には「トリガーから距離をとる」方法が効果的です。もし「これってどちらの衝動だろう?」と悩むことがあれば、専門家に相談してみるのも一つの方法です。
認知行動療法カウンセリングセンター山口店では、強迫症や依存症に関するご相談を受け付けています。一人で抱え込まず、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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