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こんにちは、認知行動療法カウンセリングセンターの岡村です。今回は、衝動をうまくコントロールできない困りごとの一種である「盗癖(クレプトマニア)」について、少し違った角度からお話ししたいと思います。盗癖は単なる盗みの行為と考えられがちですが、その背後には複雑な心理的要因が潜んでいます。この記事では、盗癖の隠れた背景やカウンセリング方法、そして社会の中でどのように支援していけるかについて探っていきます。

盗癖(クレプトマニア)の特徴

盗癖とは、経済的な必要性や物質的な欲求がなくても、物を盗む衝動を抑えられない症状です。ここで重要なのは、盗癖を持つ人が必ずしも物を「欲しい」と思っているわけではないという点です。実際、盗んだものに対して強い執着を持たず、すぐに捨てたり返したりすることもあります。盗癖の行為は、盗む瞬間に感じる高揚感や、衝動が解放される快感が動機となっていることが多いのです。

このため、盗癖の人々はしばしば「なぜそんなものを盗んでしまうのか?」という疑問に対して自分でも明確な答えが出せません。このような行動は、自己コントロールの欠如や強い内的なプレッシャーに根ざしている場合があり、ただの「悪い習慣」では片付けられない深刻な問題です。

心理的背景と盗癖の動機

盗癖には、いくつかの共通した心理的背景が見られます。

盗癖改善へのカウンセリング

盗癖改善へのカウンセリングには、従来の認知行動療法(CBT)に加え、心理教育や感情処理のスキルを学ぶ新しいアプローチが注目されています。以下は、盗癖改善において有効とされる手法です。

1. 感情認識とコントロールの強化

盗癖の衝動は、感情的な要因と強く結びついています。そのため、まずは盗みたいという衝動がどのような感情によって引き起こされているのかを理解することが重要です。感情認識のトレーニングを通じて、自分が何を感じ、なぜそれを感じているのかを明確にすることで、衝動の発生を抑えることができます。

2. 自己価値の向上

自己価値の低下が盗癖の一因となることが多いため、自分自身を肯定するためのスキルを学ぶことも効果的です。特に、自分の行動や感情に対して柔軟な視点を持ち、過度に自分を責めない思考法を身につけることが、衝動を抑制するために重要です。

3. マインドフルネスと感情の受容

盗癖を持つ人々は、衝動が生じた際にその感覚を排除しようとする傾向があります。しかし、感情や衝動を抑圧しようとするよりも、それを受け入れたうえで対処する方法が有効であるとされています。マインドフルネスの技術を用いて、今の感情や衝動をただ観察し、それに巻き込まれることなく選択的な行動を取ることができるようになります。

4. リラプス・プリベンション(再発予防)

カウンセリングが進む中で、再び盗みの衝動が発生する可能性は常に存在します。そのため、再発防止のための計画を立て、どのように衝動に対処するかを事前にシミュレーションすることが重要です。再発の兆候やトリガーとなる状況を把握し、それに備えた対策を講じることで、長期的な回復が期待できます。

社会的な理解とサポートの必要性

盗癖はまだまだ社会的に誤解されがちな症状です。「ただの悪い行為」として処罰や非難を受けることが多い一方で、その裏にある心理的な問題は見過ごされがちです。しかし、盗癖は適切な支援を通じて改善可能な症状です。社会としても、盗癖に対する理解を深め、偏見を減らしていくことが求められています。

例えば、教育機関や職場で盗癖を持つ人に対するサポート体制を整えることや、心理的なサポートを早期に提供することで、問題が深刻化する前に適切なケアを行うことができます。

まとめ

盗癖(クレプトマニア)は、単なる盗みの行動ではなく、その背後に深い心理的な要因が関わっています。改善には、認知行動療法や自己価値の向上、感情コントロールのスキルを学ぶことが重要です。また、社会全体で盗癖に対する理解を深め、偏見をなくしていくことが、盗癖を持つ人々の回復を支援する鍵となるでしょう。

盗癖で悩んでいる方やその家族の方々、ぜひ専門家に相談し、適切なサポートを受けることで回復への第一歩を踏み出しましょう。

認知行動療法カウンセリングセンターでは、盗癖に対するカウンセリングを提供しています。お気軽にご相談ください。

認知行動療法カウンセリングセンター山口店

https://yamaguchi.cbt-mental.co.jp/

——筆者情報——

岡村優希

株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役

認知行動療法カウンセリングセンター代表

公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士

個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。

さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。

◆執筆書籍

「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版

「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房

◆テレビ出演

読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日

「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演

◆雑誌掲載

「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号

◆近年の講演実績

2024年2月21日

広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師

2023年2月9日

NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師

2022年7月6日

筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師

その他、学会発表多数

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