2024年11月12日
- 認知行動療法
自己臭恐怖克服のためのカウンセリング(認知行動療法)
こんにちは。認知行動療法カウンセリングセンター山口店の岡村です。本日は、「自己臭恐怖」に対する認知行動療法(CBT)のアプローチについてご紹介します。自己臭恐怖は、多くの方にとって日常生活や社会生活に大きな負担をもたらし、他人の目や反応が気になってしまうため、生活の質に大きく影響します。当センターでは、自己臭恐怖に悩む方が安心して日々を過ごせるよう、カウンセリングを通じて丁寧にサポートしています。
自己臭恐怖とは?
自己臭恐怖(じこしゅうきょうふ)は、自分の体から悪臭が出ており、他人に迷惑をかけているのではないかという過剰な不安や恐怖を感じる状態です。自己臭恐怖を抱える人は、他人が近くで鼻をすすったり、顔をしかめたりする行動を見ると、「自分が臭うから嫌がられている」と思い込んでしまうことが多いです。このような不安が強まると、人前に出ることが億劫になり、対人関係が難しくなるため、社会的な孤立や引きこもりにつながることもあります。
また、自己臭恐怖の特徴としては、次のような具体的な行動や感情が挙げられます。
- 歯磨きや入浴の過剰な繰り返し:自分の体臭が気になり、安心感を得るために頻繁に歯を磨いたり、何度も入浴を繰り返したりします。
- 周囲の反応への過敏さ:他人が少しでも顔をしかめたり、鼻をすする仕草をするだけで、「自分が臭いからだ」と即座に解釈してしまい、不安が一層強まります。
- 生活の質の低下:人前に出ることを避けるようになるため、仕事や交友関係にも支障が出て、生活の質が低下してしまうことが多いです。
自己臭恐怖の背景には、過去のトラウマや過敏な性格が関わっている場合も多く、「周囲の人にどう思われているか」を過度に気にしてしまう傾向が影響していることが多いです。また、何気ない他人の一言や小さな仕草に敏感になり、それが自己臭恐怖の発症のきっかけとなることもあります。
認知行動療法(CBT)とは? 自己臭恐怖へのアプローチ
認知行動療法(CBT)は、「考え方」や「行動の癖」を見直し、少しずつ生活の改善を図るアプローチです。自己臭恐怖に対するCBTの目標は、「自分は悪臭を放っているかもしれない」という恐怖に対して新たな視点を持ち、社会生活に自信を持てるようになることです。自己臭恐怖を抱える方は、自分の体臭に対する不安が強くなり、日常生活が難しくなることが多いため、CBTではこの恐怖と向き合いながら改善に向けたステップを踏んでいきます。
1. 現状把握と自己臭の認識
最初に、自己臭恐怖がどのように日常生活に影響を与えているかを整理します。「どこからどのような臭いがしていると感じるか」「そのことでどんな影響を受けているか」といった部分を明確にしていきます。この段階では、臭いが本当に存在するかを追及するのではなく、「臭いがしている」という思い込みが生活に与える影響を理解することが目的です。
2. 認知のパターンへのアプローチ
次に、「本当に自分が悪臭を放っているのか?」や「他人が自分の臭いをどう感じているのか?」といった疑問を元に、自分の考え方のパターンを見直していきます。自己臭恐怖を抱える方は、他人の反応を即座に「自分が臭いから」という認知パターンに結びつけがちです。カウンセリングではこの認知のパターンを少しずつ見直し、「他人の反応は必ずしも自分に向けられているわけではない」という新しい視点を持てるようにサポートします。
3. 不安や恐怖に対する曝露(エクスポージャー)
CBTの中で用いる技法の一つに「曝露療法(エクスポージャー)」があります。自己臭恐怖の場合、特定の状況において強い不安や恐怖を感じるため、少しずつその状況に慣れていくトレーニングを行います。例えば、公共の場で他人と接する機会を増やしていき、その際の不安を和らげる方法を練習します。曝露療法を行うことで、徐々に不安の度合いが減少し、自己臭恐怖が和らぐことが期待されます。
4. 対処行動の抑制と自己受容
自己臭恐怖が強い方は、不安を抑えるために頻繁に歯を磨いたり入浴を繰り返すことが多いですが、これらの行動は一時的な安心感を与えるだけで、長期的には自己臭への囚われを強化するリスクがあります。そこで、CBTでは「すぐに対処行動に移らない」「まずはその場で深呼吸する」といった対処法を学び、対処行動を減らしながら、自己受容のスキルを身につけていきます。
認知行動療法の効果と注意点
CBTは、自己臭恐怖に悩む方が不安を感じる場面に徐々に適応し、自己臭への囚われから解放されるために効果的な方法です。ただし、自己臭恐怖の改善には個人差があり、数回のセッションで急速な効果が出るものではなく、定期的な取り組みが必要です。カウンセリングを通じて、少しずつ日常生活における成功体験を積み重ねることで、周囲の反応に左右されにくくなり、自信を取り戻していくことが期待できます。
また、CBTでは無理にクライアントに対処を強制することはせず、クライアントが自分のペースで安心して取り組めるよう配慮しています。特に自己臭恐怖の場合、はじめは不安が非常に強いため、少しずつ焦らず取り組むことが重要です。
最後に
認知行動療法カウンセリングセンター山口店では、自己臭恐怖に悩む方への個別カウンセリングを提供しています。対面でのカウンセリングだけでなく、オンラインでの相談にも対応しているため、遠方にお住まいの方や山口店に来所が難しい方も気軽にご利用いただけます。自己臭恐怖でお悩みの方は、一人で悩まずに、ぜひお気軽に当センターまでご相談ください。
認知行動療法カウンセリングセンター山口店
https://yamaguchi.cbt-mental.co.jp/
——筆者情報——
岡村優希
株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役
認知行動療法カウンセリングセンター代表
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。
さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。
◆執筆書籍
「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版
「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房
◆テレビ出演
読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日
「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演
◆雑誌掲載
「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号
◆近年の講演実績
2024年2月21日
広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師
2023年2月9日
NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師
2022年7月6日
筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師
その他、学会発表多数
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